定年退職と新規採用の抑制によってもなお「余剰人員」が存在しても、ただちには人員整理をおこなわない。その「余剰人員」は企業内にかかえこまれている。大企業は、不況期の雇用保蔵によって「全部雇用」に寄与している。大企業はなぜ雇用保蔵をおこなうのかなぜ大企業は正規従業員の雇用にはできるだけ手をつけないようにするのであろうか。いくつかの理由が考えられる。第一に、高度成長がはじまってからバブル期まで、日本経済は長期の不況を経験しなかった。
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いわゆる四〇年不況(一九六五年)、第一次オイルショック(一九七三年)、第二次オイルショック(一九七九年)、円高不況(一九八五年)という不況は、いずれも短い期間で終わった。新規採用の場合、従業員にたいする募集費用、教育訓練費がかかる。新規採用にかかる=ストと、雇用保蔵のコストとを比較すると、不況が短期で終われば、雇用保蔵コストの方が低いであろう。第二に、「終身雇用」イメージの流布がある。日本の大企業は終身雇用である、という通念はひろく社会的にいきわたっている。しかし、従業員がその幻想を信じてしまった場合、その幻想はある種の力をもつ。従業員が終身雇用を信じていない場合、会社はそれほどの覚悟をしないで人員整理をおこなうであろう。従業員の反発は強くないと予想されるからである。ところが、従業員が終身雇用を信じている場合、会社が人員整理をおこなおうとすれば、従業員は会社によって約束を裏切られたと感じるであろう。