駅ビルの中にテナントしている大型店。二十坪以上あるだろう。看板はファーマシイとなっているが、売り場の四分の三は化粧品。薬はすみっこのほうにあるだけだ。午前十一時、開店そうそうである。若い女性ばかり五人、そのうち四人は美容師のようなかっこうをしていた。化粧品販売員なのだろう。残りのひとりの女性に声をかける。彼女がいちばん年かさに見え、きっと薬の担当だろうと見当をつけたのだ。「胃薬ありますか」「はい、あります。○○さん、レジ見て」「どれにします?」胃腸薬の棚の前に来て、そう尋ねる。「えっ?」「どの薬になさいます?」「あのおー、おなかがすくと胃が痛くなるのですが」彼女は困ったような顔をする。「それに、むかむかもします」いっそう困惑したような表情になっていく。妙な間があった。「痛くて、むかむかですね。それなら食間薬がいいでしょう」やっとそれだけ小声でつぶやき、棚に手をのばし、偶然手に触れた(そのように見えた)薬を取り出す。「これはどうでしょう。錠剤もあります」胸やけ、はきけ、飲み過ぎに『イノン顆粒』「どう違うのですか?」「えっ?」「穎粒と錠剤とでは……」「穎粒のほうですね。大きいのと小さいのとありますが」「いえ、そういうことでなくて」やれやれ、である。ほとんど会話が成立しない。ほぼ、諦めである。「小さいほうをください」薬局では、当然薬についてのアドバイスをするものだと思っていた。件の女性は、それをしたくないのではなく、できないようだった。これは、彼女個人の問題なのか、それとも街の薬局では一般的にそうなのか。薬局ヴァージンとしては、どちらとも判断できないが、まあ、困ったことであるには違いない。しかしそれにしても、彼女が薬剤師でないのだとしたら、残りの四人のうち、誰が薬剤師なのだろう。薬局に複数の人がいるとき、薬剤師は誰かを見つける方法はあるのだろうか。薬はなぜ化粧品と一緒に売られているのだろう。いろんな疑問が出てきた。