こんな席なら値切ればよかった…

2012-01-14

バスは定刻に発車した。十六人乗りの小型バスだった。しかし勇んで乗った僕らは、そこでインドの厳しさを味わうことになる。直前にチケットを買ったせいか、与えられた席は、運転席の局囲につくられた補助席のようなところだったのである。こういうスタイルが日本にはないので、説明が少し難しいのだが、この小型バスは、通常の座席と運転席が壁で仕切られていた。普通の席はリクライニングがしっかり効き、空調も万全で、ビデオも見ることができる快適そうな席だった。

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しかし壁で仕切られた前の席は、幅二十センチほどの板がL字型に運転席を囲むように渡されただけの簡易座席だった。そこに七人の客がぎゅうぎゅうに押し込められるのである。足を置くスペースすらない狭さで、ひとりが腰をあげると、隣の人も引きずられて腰が浮いてしまうほどだった。焼き鳥の肉のようなものだったのだ。こういう席だとわかっていれば、運賃の値引きを交渉すべきだった。しかし僕らはそんなこととも知らずに、ひとり三百八十ルピーを払ってしまっていた。日本円で千百円ほどである。ベナレスからデリーまで乗ったバスに比べればずいぶん高い運賃を払ったというのに、その狭さは路線バス以上だったのである。僕の座った場所の上にはビデオが備えつけられていた。どうも座席と運転席を仕切る壁は、ビデオを固定するためにつくられた気がした。その席は最悪だった。映像は見えないというのに、意味のわからない音だけが頭の上から響くのである。そのなかではとても眠ることもできず、ただ黙って座っているしかなかった。このバスで明日の朝まで……。